ラムサール条約は「先駆的」で「画期的」な国際条約

ラムサール条約の名前の由来

ラムサール条約は湿地の保全と利用管理を目的にした、環境保全のための国際条約です。
この条約が誕生した会議(1971年)がひらかれた、イランのカスピ海沿岸の保養都市名(ラムサール)が条約の通称となっています。
正式名称は「Convention on Wetlands of International Importance especially as Waterfowl Habitat(特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約)」といいます。

「持続可能」がキーワード

その基本原則は湿地を「保全」すると共に「賢明な利用(WiseUse)」も促進することです。
賢明な利用(WiseUse)とは、湿地やそこで暮らす昆虫や魚、それらを捕食する鳥獣まで、すべての生息環境を保全しながら、人間が環境資源を持続的に利用していくという考え方のことです。

現在(2007年1月時点)では広く用いられるようになった「持続可能な利用(Sustainable Use)」という概念を、採択当初(1971年)から「賢明な利用(Wise Use)」という原則で取り入れていたという点で、このラムサール条約は先駆的存在です。また生態系そのものを対象とするという点で画期的な国際条約です。

ラムサール条約をまもること、それは人の環境を守ること

淡水資源の枯渇 それは陸上生物の危機

地球上の水の総量は約138万4300兆トン、この総量のうち淡水(塩分をほとんど含まない水)の割合は2.6パーセントにすぎません。別の言い方をすれば、水は大気と地表、海面をさまざまに形を変えて循環しますが、「淡水として陸上に保つことが出来るのは2.6パーセント」であるということです。

そして陸上の生物が使えるのはこの淡水です。
しかし今、その淡水(水資源)が人間の手によって、少しずつ汚染され、減少しています。

たった60年ほどの人間の活動が地球環境を激変させている

森林が伐採されることで、土地の保水能力は著しく低下します。人間の様々な生産活動によって放出された二酸化炭素は地球温暖化をすすめ氷河の氷を溶かします。(氷河の淡水→海水)川や湖の水も農業用地や工業用水として使われ、時に汚染されてしまうことすらあります。貯水の機能を持つ湿地は人間にとって利用しにくい場所として埋め立てて土地開発が進められてきました。

私達の生活は上記の活動の恩恵にあずかって便利になりました。しかし一方でたったこのわずか60年程度で、人間の生活基盤を支える水資源/自然環境が犠牲となり、すでに修復不可能に近い状態にまで進展してきてしまいました。

湿地は「生命のゆりかご」

ラムサール条約は湿地とその生態系を保全するための条約です。
湿地は地下の空間に水を蓄えることができ、時にその保水能力は森林以上です。そしてそこで保水される水はゆっくりとした流れの中で有害な物質がろ過され、浄化されます。河川の急激な流量変化は抑制され、洪水を防御するなど、水循環の調整機能も湿地は持っています。
また湿地は、陸上の動物にとって動きにくい土地であるため、特殊な動物や植物の生息・育成地となっています。タンチョウやコハクチョウなどの水鳥にとっては渡りの休憩地・餌場でもあります。湿地は「生命のゆりかご」ともよばれ、生物の多様性を保全するためにも重要な役割を果しています。
この湿地と、その生態系を保全するのがラムサール条約の目的です。

「自然のため」ではなく「我々、人間のため」

つまり、ラムサール条約に則って湿地を保全するということは、水資源や生物の多様性を保全することになります。そして水資源や生物の多様性を保全するということは、結果的に人間が生存していく上での基盤を、人間が自らで守っていくということなのです。